食に関する本のブログ

雑穀の健康学(久郷晴彦)要約

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今回は「雑穀の健康学」の要約です。
著書は健康科学研究所所長で薬学博士の久郷晴彦(くごう・はるひこ)氏です。

数学で有名なピタゴラスや哲学者のプラトン、発明と芸術のレオナルド・ダ・ヴィンチや進化論のダーウィン、重力を発見したニュートンや劇作家のシェイクスピアなど、ギリシャ時代の著名人はみなベジタリアン、つまり「菜食者」で知られおり、19世紀のロンドンやペトログラードにはベジタリアン・レストランさえあったとのことです。当時、ベジタリアンは宗教的というよりは、むしろ人間と社会や動植物を含む自然との関係に深く思いを寄せる人が多く、単に肉を食べないという考えでなく、人生の生き方を求めた人達だったと著者は説いています。食文化は風土や文化、歴史や環境、さらには習慣や宗教に加えて嗜好までも深く関係しているのです。

本要約の要点は4つです。
1、 食肉と穀物の経済効果
2、 肉食と東洋人の民族コンプレックス
3、 キリスト教と近代栄養学
4、 雑穀の重要成分

食肉と穀物の経済効果

地球の人口に対する食糧の経済性や効率の改善の必要性が多くの有識者たちから提示されています。1812年、イギリスは深刻な食糧危機に襲われました。穀物の値段は高騰し、社会の混乱は3年も続きました。その厳しい環境下において、有名な詩人シェリーは、肉食と飲酒をやめる新しいライフスタイルの必要性を熱心に説き「動物食に依存している者はそれをやめることで、健康と1エーカ分の穀物の土地を破壊しないで済む。植物からの栄養は、牛の死体から10倍も取れる」と主張しました。

日本では1931年に岩手県の冷害と豪雨にみまわれ大凶作となり、宮沢賢治が作物の栽培方法と肥料の研究に打ち込みました。そして「牛1頭を養うには8エーカの牧草地が要るが、一番育ちのいい小麦を作ってみたら、10人分の1年分の食糧が毎年とれ、牛であれば1年間で肥える160キログラは、10人の人が1年生きるには、1日たった50gしか食べられない計算だ」と説いています。
また「牛を殺して食べることはエネルギー経済からは大きな損失になることはよく知られている。牛肉を1キロ生産するには、餌の10キロを与えなければならず、その餌を作る肥料の量はきわめて大きくなる」と科学者として著名な糸川英雄博士は主張しています。

肉食と東洋人の民族コンプレックス

インド独立運動にて非暴力主義を貫いたあのガンジーもベジタリアンで有名です。ガンジーが中学生の頃、イギリスの植民地だったインドでは、ヒンズー教の盛んな地方でも肉食が流行するようになっていました。その理由は、インド人がイギリスに支配されているのは、肉食をしないことによる軟弱のせいだとする考えからでした。そのため肉を食べ洋酒を飲むイギリス人のように強靭になることが必要と考えられ、ガンジー自身も一時期は肉食をすることに同意したのでした。しかし、どうしても馴染めないことからベジタリアンに戻ったといわれています。
日本でも1871年の「新聞雑誌」にて「外国人の説に、日本人は性質総て知功なれども根気はなはだ乏し、これ肉食せざるに困れり」と動物性たんぱく質摂取の必要性が説かれています。インド人も日本人も文明社会の仲間入りをするためには、まず食事を変えなければならないという考えに洗脳さえており、洋食化が広まるに従い、健康によい日本古来の穀類は食事の中から徐々に忘れ去られるようになっていきました。
動物性たんぱく質の摂取に積極的だった医学や栄養学の関係者たちは、日本の栄養の不足を盛んに強調したのに対し、過剰摂取による不健康問題に対しては対応が非常に遅くトーンダウンしています。

キリスト教と近代栄養学

お米が日本人の主食になったのは明治以後のことで、それまでは支配階級がお米を食べ、農民たちは雑穀やイモ類で飢えをしのぐといった状態でした。対してヨーロッパでは、風土条件が食物の繁茂に不適当な地が多く、田畑にするよりも牧場にした方が有利であったため、畜産物に頼らないと生活がなりたたない環境だったので、肉食を罪悪視する仏教より、キリスト教が非常に受け入れられやすかったのは当然でした。
キリスト教の原点であるユダヤ教は、羊を主食としたヘブライ民族によって信仰されたため、その道徳や行事には牧畜生活の習慣がいくつも残っており、それがキリスト教にも引き継がれているのです。キリスト教の神話には、人間を子羊に例えたものが多いのは、その表れでした。このように、キリスト教と肉食とは深い生活上の関わりがあります。
近代栄養学は、このような肉食を前提としたヨーロッパでスタートし、家畜の成長と肥育に基づいた栄養学ともいわれる理由でもありました。このような考えから食物繊維を無価値だといい、腸内細菌の理解が進まなかった理由がここに生まれたのです。栄養素の不足による害には敏感であっても、過剰栄養の害には比較的鈍感といわれるのも、このような考え方に影響されるところがあったのでした。

雑穀の重要成分

人間の必要とする栄養素は約50種類といわれますが、精製しない穀類には約40種類の栄養素が含まれています。精製しない穀類には発芽して発根して次の世代を育てる生命エネルギーをもっているのです。そのため、この生命力の中では酵素も生きており、その酵素を私たちが利用することが出来るのです。単に栄養分析とカロリー計算だけで栄養価を考えるのは個人を番号で呼ぶようなもので、生命の一番大切なものを欠如し、短絡した発想なのです。
同じ食べ物を耐えてもその人それぞれに個人差があり、また同じ人でもその時の体調やストレスによって、必要な栄養素の量が一定ではないのです。そして食品相互の作用も複雑に絡み合っているため、全体の栄養のバランスや繋がりを考えることが大切なのです。

まとめ

この本の要約では、雑穀がどれだけ健康にいいかを説いているだけでなく、穀類それぞれの特徴と効用についても詳しく書かれています。例えば玄米であれば、食物繊維が多く含まれているため、腸内のビフィズス菌などの有用菌を優勢にしてくれ便秘を解消してくれるだけでなく、ビタミンBグループを多く作ってくれるため健康の増進に役立つことや、胚芽や糠の中に含まれるビタミンBグループやE、さらに多くの酵素やミネラルが栄養バランスを改善し、自然治癒力を高めてくれるといった効用も書かれています。気になった方は是非一度、本書を手にとって読んでみてください。

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