食に関する本のブログ

醤油・味噌・酢はすごい(小泉武夫氏)要約

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これら3種類は、米や大豆、麦などを使って醸す発酵調味料で、醸造学的、発酵学的に見てみると、互いに共通した特徴があるのをご存知でしょうか。本書は、日本人にとって欠かせない重要なし好品である醤油・味噌・酢について、歴史や周辺食文化、現状といった視点から日本人の教養として大切な知識を共有していきます。

本書の要点
1.醤油の歴史、製法、成分など
2.味噌の歴史、製法、名産地など
3.酢の歴史、製法、日本料理との関係性など

解説
1. 醤油の歴史、製法、成分など

 「醤油」は大豆、小麦、魚、鳥、獣肉などタンパクが豊富な動植物を原料として、食塩存在下で発酵させたものです。その起源は中国で、秦の始皇帝の時代から存在したと言われます。日本へ到来したのは、仏教伝来と同時期でした。弥生時代にはもうすでに食材を塩に漬け込むという調理法があったのです。奈良時代~平安時代初期には、さまざまな書物で「草醤」「魚醤」「穀醤」といったさまざまな醤が記録されています。そして室町・江戸時代になると従来の製法よりも何十倍も技術革新が進み、醤油は企業生産へと結び付いていきました。その後、明治時代から大正時代に入ると、大手企業系の醤油会社が次々と成立します。たとえば、野田や銚子、兵庫県たつの市など名醸地がたくさんあります。

 次に、醤油の製法についてご紹介します。醤油は使用原料の違いやその処理法、製品の色合いによって分類が異なります。現在、市販醤油の84%は濃口醤油、12%が淡口醤油、その他にはたまり醤油、白醤油などがあり、JASにより特級・上級・標準の三等級が規定されています。さて、それらの製法はというと、大きく分けて麹菌、醤油酵母、醤油乳酸菌の三種類の発酵微生物が必要となります。各微生物の特徴や役割については割愛しますが、基本的には大豆を蒸して、小麦を割砕・炒め、それらと微生物を混合させます。そして、何度か手入れを行ったあと、醤油麹などが生まれます。一方、こうした製法に加えて、現代では健康志向もあって「減塩醤油」が店頭に並んでいますね。これは低ナトリウム食品の表示許可基準を満たしており、濃口醤油のナトリウム含有量約18%に比べて、約9%と低くなります。
 栄養学的には、醤油にはアミノ酸レベルにまで分解されたタンパクが含まれており、それと糖が反応してできた成分が醤油の「紫」色を実現しています。また、グルタミン酸という強いうまみ成分は、魚の刺身や鮨、鰻、そば、うどん、納豆など数多くの和食メニューに使われているのです。ただ、近年の日本では、醤油よりもケチャップやマヨネーズの需要が高まり、国内生産量、消費量とも減少しています。一方で、海外では消費量が高まり、年々顕著に増加しています。和食ブームがさらに拡大していけば、日本の醤油は地球を代表しうる調味料となるかもしれません。

2. 味噌の歴史、製法、名産地など

 味噌文化が大きく発達したのは江戸時代でした。全国津々浦々で醸され、消費され、食されていき、各土地によって好まれる味や色、原料にも違いが出ていきます。明治時代に入ると、江戸での味噌製造事業は東京に広まります。さらに時代を経て鉄道が開通し、さまざまな運搬手段が発達することで、味噌は地方から都会へと届けられるようになりました。今日でも地方色を前面に出した製法が大切にされています。
 では、味噌はどうやって造られるのでしょうか。基本的には醤油と同様の工程をたどりますが、大きな違いは「仕込みの最初・途中・最後、さらに最終製品もすべて個体状である」ということです。製法によって「米味噌」「麦味噌」「大豆味噌」があり、これらの混合品は「調合味噌」と呼ばれます。味噌はまた甘辛の味によっても分類があり、この違いは大豆に対する米麹の重量比率、塩分量の違いで変わります。色の違いによる分類では「白味噌」「淡色味噌」「赤味噌」となります。その他、土地ごとの味噌として「信州味噌」「仙台味噌」「江戸味噌」などさまざまな名産品があります。
 味噌の今後を見てみると、家庭における日本国民1人当たりの平均購入数は、ここ数年間でも安定しています。輸出量については、アメリカが最も多く、韓国、台湾と続きます。たとえばアメリカのレストランでは、味噌汁のほか、あえ物、煮物、田楽、サラダドレッシングといった用途で使われます。このように、味噌は国内外でも注目されている調味料ですので、最後に健康機能の一部についても以下に列挙しておきます。

・味噌では大豆アレルギーが生じない
・血中コレステロールを下げる不飽和脂肪酸が豊富
・メラニン色素の合成を防ぐ遊離脂肪酸
・動脈硬化を防ぐレシチン
・大腸がんを予防する大豆の食物繊維
・腸内のビフィズス菌を増やすオリゴ糖 ほか多数

3.酢の歴史、製法、日本料理との関係性など
 「酢」とは数パーセントの酢酸を含む液体調味料で、米や麦、果実などを原料として酢酸菌で発酵させて造られます。その歴史はというと、酒の歴史と同じなのでとても古く、古代中国の周時代にさかのぼります。日本の食酢の最初は、飛鳥時代の大化の改新のときで、それ以降にさまざまな酢の種類が誕生していきました。近年は日本人の食生活が欧米化していますが、一方でポン酢や土佐酢、ゴマだれ酢といった「加工酢」も開発されています。
 ここで、酢の種類についてご紹介します。酢はJASで厳しく区画が定められており、まず「醸造酢」と「合成酢」に二分されます。また、「醸造酢」…穀物酢、果実酢、醸造酢の三種類、「合成酢」…米酢、穀物酢の二種類などに分類されています。

最後に、酢の健康機能ついてもお話します。酢は昔から体を柔らかくするとか、疲労に効くとか、生活習慣病の予防にいいとか、いろんな民間療法に言われてきました。ここでは、近年の医学・生理学的研究によって明らかにされた効果をまとめておきます。
・コレステロール値の低下
・糖尿病の予防
・高血圧の予防
・肥満の防止
・骨粗しょう症の予防 ほか

現在、日本の食酢生産量は高度経済成長以降から平均的に高値を保っています。健康ブームによってリンゴ酢やブドウ酢などの果実酢の需要が伸びているのも特徴的です。加えて、さまざまな洋風ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップなどの原料にも使用されるため、その需要は伸び続けることが期待されます。

まとめ
今回は、醤油・味噌・酢という日本の三大調味料の歴史から製法、成分の特徴まで幅広くご紹介しました。本書には、各調味料の細かな分類や製法など、専門的な豆知識がたくさん掲載されていますので、ぜひ一度読んでみてください。

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