今回は、「スポーツ選手などに不可欠なアミノ酸 BCAA」の要約です。
著者は医学博士/尾崎 東明(おざき はるあき)氏です。
タイトルの「BCAA」の説明の前に、人間の体にとってなくてはならない存在である、アミノ酸の説明をしたいと思います。
人間の体は、水分やタンパク質や脂質などからできていますが、その約20%はたんぱく質でできているといわれています。
そのたんぱく質が、何からできているのかというと、20種類のアミノ酸からできています。
このアミノ酸には、細胞内で合成できるもの、体内で作ることができず、食べ物から摂取するしかないものがあります。
後者の体内で作れないアミノ酸は、「必須アミノ酸」と呼ばれ、9種類あります。
さらに、この必須アミノ酸の中の3種類がタイトルにある「BCAA」という名称のものなのです。本書では、アミノ酸の働き、BCAAの働き、病気との関係を説明していきます。
本要約の要点は3つです。
1. 必須アミノ酸とは
2. アミノ酸の不足
3. 高齢者の筋肉維持に有効なBCAA(アミノ酸)
必須アミノ酸とは
前述したとおり、アミノ酸というのは20種類ありますが、このうちのいくつかは、細胞内で他のアミノ酸や、他の栄養素から合成できます。
しかしながら、体内でつくれず、食物として外から摂取するしかないものが9種類あります。
それは、必須アミノ酸とよばれ、必ず、毎日、食物の中に充分に含まれていることが必要なのです。それは毎日の摂取が必要であり、理由は、食いだめがきかないためなのです。
この9種類は、
①リジン ②トレオニン ③トリプトファン ④メチオニン ⑤フェニルアラニン ⑥ロイシン ⑦イソロイシン ⑧バリン ⑨ヒスチジン です。
この9種類以外のアミノ酸は、人の体内で作ることができます。
しかし、1種類だけ、不足しやすく、成長期や充分なスタミナ保持に必ず摂らなければならないアミノ酸があり、それがアルギニンです。つまり、大人の場合は、この9種類が必ず必要で、子どもの場合は、このアルギニン1種類を加え、計10種類の必須アミノ酸が必要といわれています。
アミノ酸の不足
体にとって大切な栄養素であるアミノ酸が不足してしまうと、たんぱく質が充分にできなくなります。そうなると、肝臓や心臓だけでなく、すべての臓器、組織が円滑に働かなくなります。成長が止まったり、老化が進んだり、疲労の回復が遅れ、全身の障害がおきます。
糖尿病、腎臓病、リウマチ、痛風、アレルギー、肝臓病、肥満、肌の老化など、ありとあらゆる病気と関わりがあります。
そのために、外科を中心にした医療の現場では、重度の病人に対し、高い濃度のアミノ酸製剤を手術の前後に与え、病気を回復させるのに役立っています。
また、アミノ酸は疲労の回復にも大きく影響します。
疲労に対する具体的な解消法としては、バランスのとれた食事をする、ビタミンB1、B2、Cなどが欠乏しないことと、BCAA(アミノ酸)を充分に摂ることが大切です。
高齢者の筋肉維持に有効なBCAA(アミノ酸)
肥満解消や健康維持の目的で運動をこころがける中高年世代が今、増えています。
運動する際、多くの筋肉を使う場合があります。
1つ目は、短縮性収縮といって、ものを持ち上げたり、筋肉を縮めながら力を発揮する運動、2つ目は、伸張性収縮といって、ものをゆっくりと下ろすなど、筋肉を引き伸ばしながら、力を発揮する運動、3つ目は、等尺性収縮といって、ものを同じ姿勢で保持するなど、筋肉の動きを止めて力を発揮する運動です。
このうち、1つめの伸縮性の動きが最も、筋肉への影響が大きく、短縮性や等尺性よりも大きな力を発揮するのですが、普段から運動していないと、筋肉に与えるダメージが大きく、激しい運動をしすぎると、筋繊維が何百本、何千本という単位で切れてしまいます。
切れたままでは、運動もできないため、筋肉にはそれを修復する力を備えています。
その時に、必要な材料がアミノ酸なのです。
アミノ酸が不足していると修復が充分に行われません。
そこで、必要となるのが、ロイシン、イソロイシン、バリンという3つのアミノ酸であるBCAAです。これを摂れば、筋肉を再生する材料が整います。
またこのBCAAは、年齢とともに、筋肉が衰えるのを緩和させてくれますので、高齢者の筋肉維持にも有効なのです。
この3つのアミノ酸は、化学構造が分岐構造であることから、BCAA(Branched Chain Amino Acid;分岐鎖アミノ酸)とよばれています。
運動中の体力維持をするとともに、スタミナを維持させてくれ、普段から運動する人や重労働する人にはかかせないものです。
その3種類の役割と含まれる食べ物は下記となります。
1. ロイシン
必須アミノ酸の一つで、筋肉の成長を促進し、筋肉の損失を防ぐ作用、肝臓機能の強化作用。
ストレス緩和作用、育毛作用、メタボリックシンドロームの予防。
動物性たんぱく質に多く含まれ、牛肉、ロースハム、レバー、さけ、アジ、カツオ節などの魚介類、チーズなどの乳製品、高野豆腐や湯葉などの大豆製品に含まれます。
2. イソロイシン
筋肉の強化、肝臓機能の向上作用、血管の拡張、体の成長を、促進する作用。
疲労回復作用、神経機能を正常に保つ作用、成長を促進する作用、糖尿病の予防作用、髪や美肌を保つ作用。
鶏肉、サケ、プロセスチーズ、牛乳などに含まれます。
3. バリン
筋肉の強化、体の成長を促進する働き、血液の窒素バランスを調整する作用、アンモニアの代謝を改善する作用、肌のハリを保つ作用、肝硬変を改善する作用、食欲不振の改善などの働き。
レバー、牛肉、プロセスチーズ、落花生などに含まれます。
まとめ
アミノ酸・BCAAとはどういうものなのか、健康を維持するためには、不可欠な存在であることがわかりましたよね。
最近は、スポーツ飲料などにもアミノ酸やBCAA配合といったものが、よく出ていることも納得です。
とはいえ、スポーツ飲料は、糖分を含んでいる場合も多く、飲みすぎは良くありません。
アミノ酸、BCAAは、食べ物から摂取するように心がけてください。
バランスの良い食事は、メタボリックシンドロームの予防や生活習慣病の予防にもつながります。
本書には、この他に、BCAAを摂ることで、美肌の効果があることにも触れています。
興味があればぜひ一度手にとって読んでみてください。
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